どこかの物語2
前回の続きからです。
僕は手錠をはめられたまま、
とうとうある日抜け出した。
抜け出す!と決めた時、
それはなぜか叶った。
僕に嫌な事を押し付けて来た奴達は、
僕を追いはしなかった。
ただ、手錠を外してくれるわけでもなく、
まるで僕のことが見えなくなったかのように
何もしてこなくなったのだ。
だから僕はとにかく、
フラフラと当てもなく歩き始めたけれど、
どこに行きたいのかなんてわからなかった。
心にあるのは『ここではないどこか』だったけれど、
一体どこへ行けば『ここではないどこか』なのかがわからなかった。
歩いていく中で時々、
もう子供ではなさそうな人達が首輪に繋がれている人を見た。
鬼に脅されている様子で
彼らは手足を河につけて4足で暮らしていた。
足で立つ事なんて忘れたようだし、
手で何かを作り出せるなんて知りもしない様子だった。
冷たい河の水に手足を浸けて
凍えながらただ生きているのだ。
鬼たちは互いの連れている人を見せ合い
自慢し合っている様子だった。
いかに自分の連れている人の方が聞き分けがいいかを
競い合っているようだ。
僕は繋がれた彼らを見た。
辛そうにも見えたけれど、
逃げようともしていなかった。
それは脅されているからではなく、
諦めているからだった。
僕は彼らの目にそれを見たんだ。
つづく
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